バンド

前ばかり向かせたがる世の中を3markets[ ]でぶち壊せ

優れた言葉を残す人はたくさんいるけど、後ろ向きな言葉や迷いを言葉にできる人はその中にどのくらいいるのだろう。

いつだって世の中は前向きな人を好み、明るく生きろと言わんばかりに固定概念を押し付けてくる。

そんな世の中で生きて来たから、ネガティブな曲はできれば聴きたくないと無意識に思ってしまっているのかもしれない。なのに、世の中の流れとは真反対のところで生きる3markets[]というバンドに惹かれるのはなぜだろう。

だれも得しないことを歌うバンド、3markets[]を紹介。

バンドマンの愚痴を聞かされる3分39秒


曲名:下北沢のギターロック|3markets[ ]

偏見だけど邦ロック好きな人って地下では「爆音浴びないと生きていけない」と言ってヘドバンしまくってるのに、地上にでたら根暗な人が多い気がする。少なくともわたしはそうで、大人数の飲み会に行くよりは、数少ない友人とお酒を交わしたいタイプ。根暗まではいかなくともキラキラした人とかあまり近づきたくない、疲れちゃうのだ。

3markets[ ]と言うバンドは完全にこっちの”陰”よりで、「夢」とか「希望」とか歌えないんだろうなと思う。というかそういう音楽のキラキラしている部分は他のバンドに譲っていて、彼らは彼らが1番居心地がいいと思える場所で歌っているのだ。誤解やれやすいかもしれないけど、3markets[ ]はちゃんとかっこいい。自分の居場所を知っていて、一般ウケはしないこともわかっているのに、自我を貫くというロックバンドだ。

この曲に関しては聴くとスッキリするというより、バンドマンのしょうもない愚痴を聞かされた気分になるのが正直なところなんだけど、普段は隠している本音が聞こえた気がして少し嬉しくなる。音楽でしか本音をいえないようなバンドマンの想いが詰まった歌の中毒性には敵いそうにない。音に乗せて歌うメロディーをベースとしているよりかは、言葉そのものにメロディーに添えるから、より3markets[ ]がもつ鬱憤とか憂鬱さが伝わってくる。

 

似通ったギターロック
母に言わせりゃみんなバンプ
見えないものを見る前に
前髪切って現実を見ろ


下北沢のギターロック|3markets[ ] 

バンプと言われて見れば、この曲の間奏部分から「天体観測」のギターリフがアレンジされたものが聴こえる気がする。またバンドマン、特にボーカルとベースの前髪が長い率は尋常じゃないなとよく思うけど、そこをバンドマン自身が突っ込むのもユーモアがあって面白い。なによりバンドマンなら耳を塞ぎたくなるような暗い歌詞で、3markets[ ]というロックバンドを自ら鼓舞している姿を1度見て欲しい。

あえて日常の暗い部分を切り取る3markets[ ]


曲名|バンドマンと彼女:3markets[ ]

これは、3markets[ ]で1番好きな歌。グレーゾーンな歌だけど、本当に綺麗な失恋歌だ。SNSで話題にもなっていた3market[ ]のこの人気曲は、バンドマンとその彼女というグレーな話題をやけにリアルに描写している。夢や希望を歌うバンドも素敵だが、ギリギリまでリアルに迫る音楽を求めている人もたくさんいるのだろう。

3markets[ ]のかざまさん(Vo)は、ブログを2012年から今年の2月まで書いていた。彼のブログはやっぱり全体的にじめじめしていて、消化不良な雰囲気が漂っていた。

内容は「WindowsじゃなくてMacユーザーばかりだ」とか「ボイトレにいって『僕はセックスができない』を歌ってやった」とか、前も後ろも向いていないようなものばかり。だけど、2017年の初夏に書かれた『バンドマンが彼女がいるのを隠す理由』という記事では、「写真をSNSにあげるよりかは、二人が幸せだってことは不特定多数の人に見せなくていいから、その幸せをくれた相手にもっと伝えてあげなって思うんすよ」と。2017年のクリスマスが過ぎ去った頃の記事では、「美容師さんに髪型の要望を伝える時に、「いつもと同じカットで。」と言う面白くない自分に急に不安になった」と。こうして時々、すごく考えさせられることをサラっと文字に残している。このブログを元に、書籍『売れないバンドマン』も出版したようだ。たくさんの弱音と、そして人生のヒントが書き連ねられたかざまさんのブログは虚勢を張っていなくて、すごく素敵なものだった。

こんなブログを綴っている作詞家がいる3markets[ ]の歌詞が響かないはずがない。日常の小さな出来事から想像力を働かせ、自分たちの音楽にするところは、3markets[ ]最大の武器だと思う。

例えば、かざまさんのソロ名義であるTHE ハブ人間の「レモン」という歌では、「レモンかけていい?」という居酒屋なんかでよくある1シーンから周りの顔色ばかり疑ってしまうことを歌う。この「バンドマンと彼女」も日常のささいなやりとりから少しづつ関係性が薄れ始めることを察する。前述した「下北沢ギターロック」の歌詞だって、バンドマンの前髪の長さと現実を紐付けたり、解散コメントに「方向性の違いで」が多いことを今更でしょと歌っている。

こうやって日常の見逃しがちな暗い部分をそっと切り取って、隠さず鋭い音楽にするところが3markets[ ]に惹かれる最大の理由だと思う。気分が上がらないときは逆になにもしてもらわない方が安心するように、無理に明るい歌を歌わず、思ってても言えないことや聴いても誰も得しないことを堂々と歌ってくれている、そのままの音楽にほっとするときもあるのだ。

前を向くことに疲れた時は、3markets[ ]をぜひ。

美容室で「いつもと同じで」と話していたかざまさん(Vo&Gt)は、その2年後に普段買っているシャンプーの10倍くらいする美容院のシャンプーを買ったらしい。そう、人は少しづつ変わるみたい。きっと3markets[ ]もこれからも根っこは変わらないけど、こういった小さな変化を遂げていくのだと思う

3markets[ ]は音楽で寄り添ってくれなどしないし、前を向けと殴っても来ない。自分たちはこういう人で、ある程度自由にやるから勝手についてこいというスタンスだと個人的に思っている。前ばかり向かせたがる、休ませてくれやしない世の中に反抗して、彼らに惹かれてしまったのでついていこうと思う。3markets[ ]の最終目標、”元気になること”が叶う日まで。

読んでいただきありがとうございました。

ABOUT ME
あき
インディーズバンドなどコアな音楽を紹介する記事や音楽界隈に関するコラム記事、またインタビューやライブレポートなど執筆。 好きなバンドはたくさんありますが、サイトを始めるきっかけの音楽はHalf time Oldとヨルシカです。