コラム

「好きなバンドが売れてしまって悲しい」と嘆く前に。

「好きなバンドが売れてしまって悲しい」なんて声をいたるところで見かける。

バンドが売れて寂しむ気持ちは、果たして悪いことなのだろうか。

この記事が好きなバンドが売れて複雑な気持ちを抱えている誰かの少しだけ前を向くきっかけになりますように。

誰のために応援しているのか。何のために好きでいるのか。

 

正直な話、「売れたら悲しい」という感情が自分にないのかと言われれば、そんなのは立派な嘘である。

チケットの整理番号の数字はどんどん大きくなるのに、大好きなバンドの姿は小さくなる。物販に並ぶ時間は増えるのに、「頑張ってください」と直接伝えられる時間は減る。

ずっと応援してきた人からすれば、バンドが売れることに対して嬉しい気持ちと共に、寂しい気持ちが生まれることは当然のことである。誰かに「そんなのはバンドのことを思いやっていない」と言われようがそんなの聞こえるわけがなくて、寂しいものは寂しいし、ちゃんと悲しいに決まっている。

だが、これはリスナー側の身勝手なわがままなのだ。

大きくなるといままでのようにいかないことが増えて、寂しい気持ちになるのは仕方のないことだと思う。でもだからといって「売れてしまって寂しい」と口にするのは絶対に、違う。「悲しい」だけで終わってしまっては、バンドは誰のために存在しているのだろうという話しになる。

「遠くなるから売れて欲しくない」と願うリスナー1人のためだけにバンドマンは音楽をしているわけではない。そういったリスナーを含むたくさんのファンと、そして自分たちのために音を鳴らしているのではないだろうか。売れること自体に興味がないバンドマンはいるかもしれないけど、「たくさんの人に聴いてほしい」と願わないバンドマンなんていないのだ。

わたしたちリスナーがそういった悲しいという感情を抱くことは自由だ。だけど「売れて悲しい」と口に出して訴えかけるのも、それだけで終わるのも、よくないことだ。それでは、応援する気持ちがただのエゴになってしまうのである。あなたが好きなバンドをはじめ多くのアーティストは、 “武道館でライブしたい”なんて、大きな夢を描いている。ファンである私たちリスナーが応援しないで、誰がこの夢を応援できるのか。バンド側だって喜んで欲しい人に喜ばれなかったら、悲しいだろう。

「売れて悲しい」と口にするなら、その代わりに「たくさんの人に届いてほしい」と言って欲しい。「売れて悲しい」からは何も生まれないけど、「もっとたくさんの人に聴いてほしい」という気持ちからはたくさんのことが生まれる。わたしが”知って欲しい”という気持ちだけで、知識も何もない中このメディアを始めたように、予想外なことがバンドにも、自分自身にも起きるかもしれないのだ。

確かに売れてしまったら今までとは違うことがたくさん起こる。当たり前だったものが当たり前ではなくなる。だけど、そこだけにとらわれては今まで応援してきた自分も、そして大好きなはずのバンドも悲しくなるのではないだろうか。

「売れてしまって悲しい」で終わるのは、あまりにももったいない。

 


バンドマンという職業である彼らと、わたしたちリスナーは友達ではない。彼ら自身ではなく、彼らの音楽こそが、わたしたちリスナーと近い存在でいてくれることを忘れてはいけない。
バンドが大きくなるにつれ彼らの世界も広がる。そうして、より素敵な音楽を作ってくれる方が今よりもっともっと”近い存在”になってくれるはずだ。

下手な友達なんかより自分の気持ちをわかってくれる歌詞がある。眠れない夜にそばにいてくれるメロディーがある。日々のなかでどれだけあの音が原動力なのか。こんな幸せが続くように、「売れてしまって悲しい」で終わらせてしまうのは、あまりにももったいない。

「売れる前はよかった」と後ろを向くならば、どうかその先の大きくなったからこそ見せてくれる景色がある未来を想像して前を向いてほしい。

押し付けがましい部分があったかもしれないけど、好きなものを好きと思える時間がより長くつづことを祈ってこの記事を閉めようと思う。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

ABOUT ME
あき
インディーズバンドなどコアな音楽を紹介する記事や音楽界隈に関するコラム記事、またインタビューやライブレポートなど執筆。 好きなバンドはたくさんありますが、サイトを始めるきっかけの音楽はHalf time Oldとヨルシカです。